1991 FORD BRONCO
THE 90’s STRIKES BACK ナインティーズの逆襲
ブロンコと言えばアーリーブロンコの人気が高騰しており、93年~96年の最終モデルもまだまだ現役。しかしその1世代前の87年~92年までのモデルはあまり日の目を浴びることのないレアキャラだった。
多少雑に扱っても絵になる、道具感満載のフォルム
ファミコンが登場して子供たちの遊び方がガラッと変化し始めた80年代後半、自動車シーンにおいてもアナログからデジタルへと進化を遂げるがごとく、デジタルメーターの採用やスイッチで操作可能な電動機能をこれでもかと言わんばかりに装飾するクルマが目立ち始めた。しかしそんな中、古き良きスタイルを守る姿勢を崩さなかったのが、アメリカンSUV。
ワゴニアにおいては91年の最終モデルまでキャブレターを貫き、K5ブレイザーに至っては、ボディとシェルが脱着可能なギミックを最後まで守った。そのK5のライバルとして人気を二分していたのが紹介するブロンコだ。一回り小ぶりなアーリーブロンコからフルサイズになり、フェイスやフォルムに若干の変更が加わりながら熟成したにも関わらず、何故かこの第4世代だけはあまり日の目を浴びなかった。同時期にジュラシックパークにも登場する初代エクスプローラーが爆発的なヒットを飛ばしていたことも要因の一つかもしれない。
しかし30年の時を経て、その精悍なマスクを見ると当時以上に魅力的に映るのは私だけじゃないはず。〝ブサ可愛い〟なんて言うと失礼かもしれないが、線だけで描いた様なシンプルなフェイスに、ゴールデンレトリバーの様な愛くるしさと逞しさの入り混じるボディカラー、そして質実剛健なフォルムの中にほんのりと滲み出る遊び心は、見れば見るほどに味わい深い。
また、ブロンコはほかのアメリカンSUVよりも早い段階でフロントコイルサスペンションを採用しており、前後リーフ車に比べて乗り味がマイルドなところも特筆物で、5ℓのV8インジェクションを搭載。見た目からハードで扱い難い印象を受けがちではあるが、実は非常に乗りやすかったりもする。今流行りのオートキャンプ、アウトドアでも絵になるクルマとして、再び日の目を浴びて然るべきクルマなのだ。
左ヘッドライト下にあしらわれた4×4のさり気ないアクセント、無駄に大きなステーで固定された小ぶりなサイドミラー、少々力を入れないと開閉が難しい三角窓は、何もかもがスイッチ一つでオート機能となったここ最近のクルマにはない懐かしさと、道具としての味わい深さが滲み溢れる。
リアゲートの鍵が真ん中ではなく、左端に配置されるのは背面タイヤ装着モデルが存在するからである。パワーウィンドータイプのリアゲートガラスは開放感抜群で、重量感溢れるリアゲートはアウトドアでベンチとしても大活躍。ただし炎天下の時は鉄板が熱くなるので要注意。
センターラインの15インチに31×10.5R15のジオランダーMTを装着。オートマティックハブはオフロードシーンにおいて必要な時に自動で機能する。過剰なリフトアップを施さずとも走破性は充分。
搭載されるエンジンは145hpを発生させる5.0ℓ V8のインジェクション。同年代のGM系で搭載される5.7ℓ V8のTBIエンジンとは異なる、フォード車らしいサウンドは実に官能的。キャブレターモデルの様な見た目ではあるが、実は暖気もそこそこに走らせられるお気軽なモデルだったりする。
驚くほどにクリーンな状態のインテリアは、おそらく前オーナーが総張り替えを施したもの。明るめのキャメルレザーは座り心地もふかふかで、まるで応接室のソファに腰を掛ける様な感覚。運転席&助手席それぞれにアームレストがついており、センターコンソールを外してウォークスルー仕様にして乗ってみても使い勝手が良さそうだ。
THANKS:TOM GARAGE
TEL:072-828-5112
PHOTO&TEXT:石井秋良
アメ車マガジン 2020年 4月号掲載