1970 PLYMOUTH SUPERBIRD
すべてを制するための「最強の翼」
60年代後半のNASCARでの最高速度が年々高まる中、エンジン出力に加えて、よりダウンフォースを得るための空力特性が重要視されるようになった当時。67年にはそれまでコロネットで参戦していたダッジは、ハッチスタイルでより空力特性に優れるチャージャーにスイッチ。対してプリマスは、それまでのベルベディアよりも、空力特性を加味して新設計したロードランナーを68年にデビューさせた。とは言えこの時点では、ストックカーレースでは、その名のとおり、市販車をベースとしており、当時のトレンドを反映した武骨な箱形車に過ぎず、現在の考えからすると、空力を意識しているとはとても思えないレベルだった。
そんな中、ダッジはチャージャーをベースに、NASCARウォリアーとしてホモロゲカーをリリースする。特徴的なダックテールを囲うようにアレンジした専用リアガラスと、彫りの深いグリルには、68年型コロネット用を装着し、空力特性を高めたチャージャー500をリリース。強敵フォードも、同等の手法による新型車を導入し対抗する中、NASCARのオーバルトラックでは最大となるタラテガ・スーパースピードウェイが建設され、高速化に拍車がかかった。既に時速190マイル(時速約305km)に達していただけに、時速200マイル(時速約321km)超えを想定し、協力なダウンフォースを得るべく、延長ノーズコーンと巨大なリアウイングで武装した、チャージャー500のスペシャルバージョンの「デイトナ」を69年型としてリリース。そして、70年には、プリマスからもロードランナーをベースにしたウイングカーの「スーパーバード」が登場した。70年のNASCARにおいては、圧倒的な速さを誇り、史上初の時速200マイル超えを達成したのである。
ダッジ・デイトナは、専用リアガラスなどで空力特性を高めたチャージャー500にノーズコーン&リアウィングを追加したのに対し、兄弟車のプリマス・スーパーバードは、ロードランナーをベースにしながらも、専用のリアガラスにアレンジしたうえで、フロントフェンダーは、なんと、70年型ダッジ・コロネット用を採用している。追加されたノーズコーン&リアウィングもデイトナとは別物で、それぞれ専用設計されている。巨大なリアウイングの高さは、風洞実験によって、ルーフと同じ高さで十分目的を果たせることが判断できたが、トランクを開けることを考慮して、ルーフよりも高くされたのだった。
ちなみに、リアウイングの高さは、デイトナよりもスーパーバードの方がより高く、傾斜角もあるため、ウイング単体で見ても、どちらの物か判断できるほど明確な違いがあるのだ。69年度のホモロゲモデルに課せられた量産義務台数500台に対応して、デイトナは実売503台でクリアしたが、70年度では規定が1000台に倍増されたスーパーバードは、意外にも1935台を難なくクリア。
追加されたノーズは、運転席からではほぼ見えないうえに、内装は基本的にロードランナーと共通ではあるが、フェンダーのベントや、サイドミラーにチラっと映るリアウィングによって、スーパーバードであることが確認できる。オリジナルスペックに則ってリビルトされた426HEMIは、オートマチックとの組み合せながらも、ファイナルレシオはヘビーな4.10:1とあって、加速力はハンパじゃない!点火システムも含め、ストックをキープしているだけに、HEMI本来のポテンシャルが、いかにパワフルでシャープであったかが確認できたのだった。
レース仕様のHEMI(A864)は、NASCARのレギュレーションに則ったシングル4 バレルだが、ストリートHEMI(A102)はシングル4バレル2機による8バレル。トランスミッションは、トルクフライト727(3 速AT)。スーパーバードのHEMI カーにしてコラムシフトという渋い組み合せ。ちなみに、スーパーバードでは、HEMI、440・6バレルは元より、4バレル440 車であってもエアコンの設定はない。
ロードランナーに対して19インチほど延長されたため、全長は221インチ(5613mm)とフルサイズ級のスーパーバード。専用のリアガラスの装着に伴って、バイナルルーフが標準となる。ロードランナーがヘルメットを持ったマーク&Plymouthデカール、空力を加味したAピラーのカバー、フェンダーのベント、フードピンも標準装備なのだ。