et cetera about AMERICAN CULTURE -アメカルにまつわるエトセトラ-
#10「男はつらいよ 」
2019年の「アベンジャーズ・エンドゲーム」で一旦、大団円を迎えたマーベル・シネマティック・ユニバース(МCU)。そのメインヒーローの一人がご存知キャプテン・アメリカです。以前、「アイアンマンは(少なくとも)日本ではあまり馴染みのないキャラだったことが幸いした」的な事を書きましたが、キャプテン・アメリカは…特に最初の頃は個人的に微妙なキャラでした。私はアメコミに明るいわけではないので、それほど馴染みはありませんでしたが、そのド直球なネーミングや派手なコスチュームによって、なんとなく「そんなヒーローいたよね」くらいの認識ありました。それだけに、21世紀に大人が演じるキャラなの?とも思っていたものです。そしてМCU最初のお祭りである「アベンジャーズ(’12)」の上映を知った時、半ば義務的にDVDで見たキャプテン単独タイトル第一作「ザ・ファーストアベンジャー」初見の印象は…地味。正直言って少し眠くなってしまったくらいです。ところが次作の「ウインターソルジャー」あたりで印象が変わり始めます。アクション映画として出色な同作の出来もさることながら、その後に続く各作品内において、根っからの「キャプテン気質」であるキャプテン・アメリカ@スティーブ・ロジャースと、現代的・理性的なアイアンマン@トニー・スタークとのぶつかり合いや、素直に手を結べないもどかしさが事あるごとに描かれ、МCUに人間ドラマとしての厚みを持たせています。そして…「アベンジャーズ・エンドゲーム」。すったもんだの末、ムジョルニア(ハンマー) を手にした傷だらけのキャプテンが発した「アベンジャーズ、アッセンブル!!」の号令には、観客全員が目頭を熱くしたに違いありません。
徴兵検査で落とされ続けるような虚弱体質でありながら、どうしてもお国の為に働きたかった彼は、その強く正しい心を買われ、スーパーソルジャー計画によって最強兵士に生まれ変わります。しかし、軍は戦地ではなく広告塔として舞台で彼を躍らせ続けました。私が感じていた「派手なコスチューム」は正に「宣伝マン的衣装」として描かれていたのです。自らのそんな状況に悩んでいた時、幼馴染の所属する部隊が捉えられたと知った彼は単身で敵地に乗り込み、見事に救出を実現。名実ともに「キャプテン・アメリカ」であることを周囲に認めさせるのです。その後、いついかなる時も彼は誠実であろうとしました。悩みながら成長していったトニー・スタークに対し、スティーブ・ロジャースは最初から最後までキャプテンであり続けたのです。時には自分自身の幸せを二の次にして。そんな彼は正に良い意味での「強きアメリカ」の体現者。アイアンマン推しの私ですが、シリーズをおさらいする度にキャプテンへのリスペクトは強まるのです。
TEXT & ILLUSTRATION : JIN HATTA
アメ車マガジン 2020年 12月号掲載