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et cetera about AMERICAN CULTURE -アメカルにまつわるエトセトラ-
#13「警官とコーヒーとドーナツ 」

アメリカ映画によく登場する警察官。その役割は様々ですが、邦画よりも印象が強い気がするのは、より市民生活に身近な存在なのだからかもしれません。そんな警官と親和性が高いのが「コーヒーとドーナツ」。いくらでもその例は思い当たるのですが、個人的に即座に思い浮かぶのが、「ダイハード(’88)」に登場するパウエル巡査部長です。

普段は庶務を担当しているパウエルですが、強盗グループに占拠されたナカトミ・プラザ付近に偶然いたため、事件に巻き込まれてしまいます。パウエルとブルース・ウィリス扮するジョン・マクレーンの無線でのやり取りがジョンの心情描写になっているなど重要な役割。そんなパウエルですが、なぜ、デスクワークにもかかわらず深夜の市中にいたかというと…コンビニにドーナツを買いに来ていたのです(笑) 店内商品棚から大量のドーナツをわしづかみにしたパウエルは、聞かれてもいないのに「女房が妊娠してね」とほくほく顔で店員に告げますが…自分用なのは明白。パウエルは「ダイハード2(’90)」にも登場しているのですが、デスクの上に散らばっているドーナツを見ると他人事ながら少々心配せずにはおれない食環境です。

そしてもう一つ印象的なのが、’90年代初頭にカルトブームを巻き起こしたアメリカ製TVドラマシリーズ「ツイン・ピークス」。カイル・マクラクラン扮するクーパー特別捜査官が捜査のため訪れた田舎町ツイン・ピークスで起こる群像劇です。脚本・監督が奇才デヴィッド・リンチですから、今なら「考察サイト」が立ち上がるだろう不思議なドラマでした。その中でクーパーが愛してやまなかったのがチェリーパイとコーヒー、そしてドーナツだったのです。

さて、なぜこれほど警官とコーヒー&ドーナツの相性が良いかというと…割と有名な都市伝説があります。「某ドーナツ店では警官が制服で来店するとコーヒーとドーナツが無料で提供される」というもの。真贋諸説あるのですが、「公式には無いが全く無かった訳でもない」ということらしいです。24時間営業といえばコービーショップくらいだった在りし日々、深夜勤務の際に空腹を解消し、さらに眠気を覚ますにはコーヒーとドーナツくらいしかなかった。そして深夜の営業は不用心。そこで制服警官に立ち寄ってもらえれば防犯にも役立つ…というお互いの利害が一致して、そのようなサービスが一部で行われていた…ということのようです。その辺の事情、やはり日本とは少々異るようです。

ところで…今回少し調べたところ、ダイハードのパウエルがコンビニで買っていたのは、実はドーナツではなかったことが判明!( 吹き替えと字幕ではわからなかった) さらにそれを調べる過程で面白い映画を一本見つけちゃいました。そちらについてはまた次の機会に。
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TEXT & ILLUSTRATION : JIN HATTA
アメ車マガジン 2021年 3月号掲載

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