1971 Chevrolet ElCamino
シェベルをベースとする乗用車としての魅力と、ピックアップトラックならではの機動力を兼ね備えるエルカミーノ。中でもサードジェネレーション(68~72)は、セダンピックアップのアイコンであると同時にマッスルカーとしてのキャラクターを持つ最後の世代としても魅力大である。
ワークホースとして活躍するピックアップトラックにして、フォーマルなシチュエーションでの対応や、乗用車としての装備を求めるニーズから誕生した「セダンピックアップ」。オーストラリアにおける戦前のフォード車がルーツで、アメリカにおいてはフェアレーンをベースしたランチェロが1957年にデビュー。シボレーではフルサイズのインパラ/ビスケインをベースに59年にエルカミーノを投入。5世代に渡って87年までラインナップする中でも、68~72年のサードジェネレーションは、シボレーの主力モデルのシェベルをベースにするマッスルカー世代の最終としても高い人気を誇っている。
マッスルカーを基準とした場合、ルックスもパワーも70年型が頂点となっており、71年型はマスキー法の制定によってパワーダウンを余儀なくされるが、ルックスや扱いやすさなどフレンドリーなのがポイント。それだけに、価格が高騰する現在においても、比較的値ごろ感が良く、モデルのキャラクターにマッチしてカジュアルに付き合える点で好感度が高い。
この個体は、外観的には塗装がくたびれたパティーナな状態ながら、愛機のハーレーの運搬から、日常使用にも難なく対応するアップグレードが施されているのがポイント。それでいてフロント:スキニー&リア:ファットなドラッグレース向けのタイヤ&ホイールのセットアップによって、マッスルカー血統のキャラクターにもマッチしてなんともクール!
ビンテージアメリカンにステイタスを求める傾向が目立つ中、これまでにタフなマッスルカーやチョッパーを乗り継ぐオーナーのキャラクターやライフスタイルとシンクロしているこの個体は、なんともアメリカンで魅力的に映る。
マッスルパッケージのSSに対してエコノミーなスタンダード車をベースに、リアエンドにはLSDを組み込んで、タイヤ/ ホイールのアレンジでドラッグスタイルにまとめた。やれたストックの塗装やモールディングによるギャップ萌え感がカッコ良い!リアルな使用感が、オーナーの付き合い方や使用目的に見合っている点で好感が持てるのだ。
エンジンは基本的にストックの状態で、とりたてたアップグレードなどもしていないものの、始動から走行までストレスがなく、いたって快調。LSD装備のリアエンドによって、スタンダードなエンジンにしてクイックな挙動&トルク感が味わえる。実際のスピード以上に、スピード感が感じられる点で、パワーにも不満がない。
パワートレーンは、GMにおいて最もスタンダードな350ciエンジン&TH350(3速AT)の組み合わせ。数年前にカリフォルニアから輸入して新規登録時に整備を施した程度ながら、ストレスなく実働。カジュアルなストリートカーとして特別なモディファイなどはあえてしていない。
ドラッグマシン的なアプローチによるスキニー&ファットなタイヤ/ ホイールの絶妙な組み合わせによって、抜群のプロポーションを構築。ファットなリアタイヤを装着するうえでは、タブを加工して対応。フロントはおなじみのクレーガーなのに対して、リアはレース専用のレアなモノコック社製!
茶系の内装は、車体色同様にファクトリーストックなだけに、グリーンとの相性がよく、当時のトレンドが反映されている。外装と同様にクリーンではないが、適度な使用感がリアルで、モデルのキャラクターにマッチして、むしろ雰囲気がある。メーターは一見するとスタンダードのストックと思いきや、アナログとデジタルが融合するダコタデジタル社による“レトロテック” を採用! 昼間と夜とで異なる表情を楽しめる点でも◎。エアコンのスイッチにおいても同様に、ストック調のデザインにして最新の無段階調整&バックライト式のビンテージエアー社製。
Owner:MURATA さん
これまでにクーガー、チャレンジャー、ベルベディアといったマッスルカーや、チョッパーの運搬に活躍するダッジバン・パネル、C1500エクステンドなどを乗り継ぐMURATAさん。このエルカミーノは気軽に付き合うべくバランスの良いアップグレードを施しており、自身の趣味やライフスタイルともマッチしている。
PHOTO&TEXT:石橋秀樹
アメ車マガジン 2021年 6月号掲載