1932 Ford Pickup
AMERICAN TRUCKS -ピックアップトラックの無限なる可能性-
古き良きスタイルを保持しつつ走りは「更新」されたデューストラック
ピックアップトラックのベテランオーナーによって約20年所有される“ デュース”トラック。武骨な専用グリルのコマーシャル(商業車)ながら、レストロッドとしてボディはストックを保持しながらも、アップデートしたサスペンションによる絶妙な車高スタンスでギャップ萌えな魅力を放つ。
エクステリアはオリジナルを保持しているレストロッド
デュースこと1932年型フォード・モデルBは、ストリートロッドにおいてもっともポピュラーなモデル。初めてV8が設定されたモデルであることや、それ以前のモデルAから受け継いだデザインの決定版にしてその一年間しか存在しない希少性などで、とりわけ人気も価値も高い存在。速さが魅力に直結するだけに、他のモデル同様、ロードスターやクーペが主流。クーペやセダンなどのパッセンジャー(乗用車)に対して、トラックはコマーシャル(商業車)として専用の廉価版グリルが採用されており、ルックスの面で劣るため、パッセンジャー用のグリルにアレンジするケースが多い。
この個体は、グリルをはじめ、ボディ全体もストックを保持するいわゆるレストロッド。オーナーは高校生だった80年代後期に訪れたムーンアイズ・ストリートカーナショナルズで、アメリカンなトラックの魅力を知り、それ以来マニアックなミニトラックを乗り継いできた。アメ車としてはストリートロッドのアイコンであるデュースに憧れていた。そんな中で遭遇したこの個体は、スタイリングも条件も自分の希望に見合っていたため、購入に踏み切った。
足回りはフロントは独立懸架、リアはコイルオーバーでアップグレードしている。それと同時に絶妙に調整された車高スタンスによってストック以上の魅力を放っているのがポイント。メカニズム的にも設定的にもバランスが取れており、見た目だけでなく乗り心地も良く、市街地からロングトリップまで快適に走行することができるのだ。サーキット走行会にも参加したり、ホビーカーとして19年間の付き合いとなる。
戦前のモデルというだけで、国内ではまともに走るのか神秘的に思われるかもしれないが、レストロッドとしてサスペンションやパワートレインまで定番メニューながら、きっちりとアップグレードしているため、気兼ねなく快適にドライブを楽しめる。車高スタンスも絶妙で、ルックスだけでなく、クリアランスもしっかりと確保されている。
武骨なコマーシャルグリルも含め、ボディはストックを保持。外観でのアレンジは、ライトのダウンサイズ&取り付け位置の変更のみ。黒で塗り分けたことで、プレスラインの美しさが際立っている。
3連装のストックタイプのクラスターに社外のゲージをセット。コラムに設置したタコメーターやステアリングがオールドスクール。乗用車からの流用と思われるセパレートシートを採用。室内は一見すると狭い印象だが、平均的な大人なら不満のないサイズ。
クロームのスチールホイールは、クラッシックアメリカンでは定番のベビームーンタイプ。サスペンションはフロントが独立懸架、リアはコイルオーバーにアレンジ。ショックはいずれも無段階調整式を採用。クールな車高スタンスと快適な乗り心地を両立する。
近年リフレッシュしたばかりのエンジンは、ブループリントのアルミヘッドを組み込んだGM350ci。連結するトランスミッションTH350(3速AT)も含め、レスとロッドなどでは定番的な仕様。軽量なストリートロッドにおいては必要にして十分なポテンシャル。
Photo & Text ★ Hideki Ishibashi