et cetera about AMERICAN CULTURE -アメカルにまつわるエトセトラ-
#26「Who you gonna call?」
映画やアニメを見始めた頃からなんとなく「ああ、国民性の違いって意外とこういうところに現れてるのかもしれない」と感じていたのが、モンスターやクリーチャー…特に顕著なのが宗教観にまでかかわってくるであろうお化け・ゴーストの違いでした。
まず、日本で「お化け」といえば妖怪マンガの大家・水木しげるです。約250年前に創作された「画図百鬼夜行」などをベースに漫画化された妖怪たちは、「ゲゲゲの鬼太郎」という強力なコンテンツによって各世代の脳裏に強く印象付けられているハズです。ゲゲゲに登場する妖怪たちは「八百万信仰」の日本らしく、無機物である傘や反物などを依り代とした妖怪が、人や獣を依り代としたそれと同じように活躍します。
もう一つのラインは、「四谷怪談」や「リング」などに代表される怪談。怨念を軸としたそれら物語は、日本人のウエットな国民性を端的に表しているとも言われています。それでは、海外…それもエンターテイメントとして慣れ親しんでいる米国では…というと今春にも続編が公開された「ゴーストバスターズ・シリーズ」が話題になっています。
1984年、スーパーナチュラル(超自然現象)を軸にしたコメディ映画「ゴーストバスターズ」が公開、アメリカはもとより日本でも大ヒット。人気コメディアン&映画人であったビル・マーレイやダン・エイクロイド(すっかり太っていますが、ブルース・ブラザースののっぽの方です)、そしてハロルド・ライミスによる好演ももちろんでしたが、様々な手法で描かれたゴーストも人気の要ともなっていました。
「ゴースト:GHOST」を和訳すると、一般的には「幽霊」となっています。日本で幽霊というと前述した「四谷怪談のお岩」や「リングの貞子」がイメージされますが、ゴーストバスターズに登場するのは、緑色をした「スライマー」や破壊の神の番犬「テラードッグ」、そして大人気の「マシュマロマン」など、幽霊というよりクリーチャーやモンスターと言った方が適切なキャラクター達です。これらの日本的感覚からすると少々雑…好意的に解釈すると子供にも理解しやすいキャッチーなデザインのゴーストたちがニューヨークの街中を暴れまわります。
そこで日本なら陰陽師や呪術師が九字(呪力を持つとされる九つの漢字)を結んで昇天させたりするわけですが、ゴーストバスターズでは3人組の心霊学者が小型原子炉を利用したレーザー光線で捕獲するのですからある意味で単純明快。さらに決して子供だましではない娯楽作に仕上がっているのですから、世界中でヒットするのも当然です。そんなゴーストバスターズの純粋な続編である「ゴーストバスターズ・アフターライフ」が絶賛公開中。
こちらはコメディ色は押さえめで上質なジュブナイルストーリーとなっていますので、よろしかったらぜひぜひ。
TEXT & ILLUSTRATION : JIN HATTA
アメ車マガジン 2022年 5月号掲載